監修:青山健一
はじめに
受け口の治療といえば、外科矯正の説明を受けることが多いと思います。
受け口治療においては、骨格の改善を望まれている場合は「外科矯正」しか方法はないですが、歯の噛み合わせ希望の方や骨格の改善までは望まれていない患者さまには、歯を抜かないで受け口を治す矯正治療をご紹介いたします。
目 次
1.受け口の特徴と治療法
『下顎前突(反対咬合、受け口)』とは不正咬合の一種で、噛み合わせたときに下顎が上顎より前方に突出していることをいいます。
正しい噛み合わせ
下顎前突
受け口で困る事
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- 前歯で食べ物を噛み切りにくい
- サ行やタ行の発音が舌足らずな発音になりやすい
- 下顎が動きにくく顎関節症を引き起こすリスクがある
- 口を閉じた時に「への字」になりやすく、怒ったような表情に見えてしまう
受け口の原因
○遺伝によるもの
骨格性の受け口の場合は遺伝が原因になっていることが多いのが特徴です。
両親のどちらかが受け口である場合、子供にも遺伝する確率が高くなります。
○前歯の生え方によるもの
上の前歯が内側に傾き、下の前歯が外側に傾いて生えてしまった場合に受け口になってしまうことがあります。
○悪習慣によるもの
指しゃぶりや舌で下の歯並びを内側から押すような癖、下のあごを前に突き出す癖などがあると、下顎の成長が促されて受け口になってしまうことがあります。
また口で呼吸をする癖(口呼吸)があると、鼻呼吸が行われないために上顎がきちんと成長せずに受け口になってしまうことがあります。
受け口の治療法
子供の場合
2歳までの受け口の約半数は自然に治ると言われていますが、3歳の時点で受け口の場合は自然に治る可能性はかなり低いと言われています。
そのため3歳以降で受け口が分かった場合は早い段階で治療を開始するのが望ましいです。
<3~6歳頃>
「ムーシールド」という就寝時のみ装着するマウスピースタイプの装置を使用します。
この装置は歯並びを治すというよりは、舌の位置を安定させ口の回りの筋肉を正常化することで、 上あごの成長を促し、下あごの成長を抑えて改善させます。
<6歳以降>
骨格性(遺伝性の場合が多い)の場合は、下顎の成長を抑制する「チンキャップ」や上顎や成長を促進させるような「上顎前方牽引装置」というような頭部につける装置を、家にいる間に装着する治療法があります。
チンキャップ
上顎前方牽引装置
<永久歯が萌え揃ってから>
永久歯が萌え揃い、あごの骨の成長が終了する年齢(18歳以降)になると、一般的には抜歯矯正やまた、外科手術を併用する抜歯矯正が必要と診断されることが多いです。
2.外科矯正(アゴ切り)の特徴と治療法
骨格に原因がある場合の受け口は、外科手術を行い骨格から改善する方法がベストと言えますし、顔貌も治したい場合は外科手術が避けられませんが、外科手術は数週間の入院や相当な痛みや苦痛が伴うため、実際には外科手術をしてまでは矯正したくないという方がほとんどです。
外科矯正のスケジュール
①術前矯正(1~2年)
ブラケット装置でデコボコの改善を行います。
②手術(1~4週間の入院)
③術後矯正(半年~1 年)
ブラケット装置で噛み合わせ、歯並びの最終調整を行います。
3.抜歯矯正と非抜歯矯正(歯を抜かない矯正)の比較
~非抜歯による矯正治療が選ばれている理由~
そこでおすすめしたいのが「非抜歯矯正」です。
非抜歯矯正は親知らず以外の抜歯はもちろん外科手術は行わないため、輪郭や骨格は一切変化しませんが、歯並びや噛み合わせは改善する事ができます。
「歯医者が身内にお勧めする矯正治療。歯を抜かない「非抜歯矯正」とは?」
3、非抜歯による矯正治療が選ばれている理由
4、非抜歯による矯正治療の流れと臨床例
非抜歯矯正で受け口が治るポイント
Point1MEAWワイヤー(Multiloop Edgewise Arch Wire)を使用!
ループを使って自由に歯を動かすことができるワイヤー。
歯を3次元的に動かすことができるので、奥歯を後方に動かすことでスペースを作り、歯を抜かずに矯正治療ができるのが特徴です。
咬み合わせを改善していく為に、MEAWワイヤーと顎間ゴムの使用が重要です。
Point2Point1で確保したスペースを利用して、下顎の前歯をやや内側へ傾斜させる
下の前歯のエナメル質を0.2~0.5mm程度削合し、やや内側へ傾斜させることで前歯を噛み合わせます。(歯の健康には問題ありません)
☆まとめ
いかがでしたでしょうか?
受け口の矯正治療は、抜歯矯正か外科矯正でしか治せないというのが一般的な常識でした
が、3次元的に奥歯を動かすことで抜かない矯正治療でも矯正治療が可能になりました。
矯正治療も日々進化しているので、今後もいろんな進歩をきたしてくださいね。