目 次
Q.矯正治療中に歯の手入れで注意することはありますか?
Ans.せっかく歯並びはきれいになったのに、矯正治療が終了したら虫歯だらけになってしまったのでは、何のために矯正治療をしたのか分からなくなってしまいます。
大人の場合、歯の成長は完成されていますので、エナメル質が十分残っている人は、虫歯の心配はほとんどありません。
が、子供の場合は歯がまだ成長途中で柔らかいため、虫歯には十分に気をつけないといけません。
人間の体は、口の中に異物があると唾液が多く出るようにできていますので、矯正期間中は、治療の器具が口に入っているので、唾液が増え、口の中が酸性になりにくいというメリットはありますが、気をつけて歯を磨かなければならないことに変わりはありません。
注意して欲しい項目をいくつかあげてみましょう。
1.普段より小さい歯ブラシを使う
どうしても矯正装置が邪魔をして、完全に汚れを取り除くことは難しいので、小さい歯ブラシを使うことによってより隅々まできれいにするようにしてもらいます。
2.歯間ブラシを使う
デンタルフロスを使っている人の方が多いと思いますが、矯正治療中は歯が動いているために、歯と歯の間にすき間ができているので、デンタルフロスよりも歯間ブラシの方が使いやすいと思います。
普段は頬の側から使用するものですが、矯正装置で入れにくい箇所は、歯の内側からでも入りますので、入れやすいほうから使用してください。
3.フッ素ジェルを使う
どんなに気をつけて磨いても、矯正装置やワイヤーなどが邪魔をして、完全に汚れを取り除くことは無理なので、虫歯になりやすい人にはフッ素ジェルを使ってもらうと効果的です。
普段、矯正装置がついていない人に対しては、あくまで、歯ブラシ、歯間ブラシ、デンタルフロスといった物理的に汚れを取り除く手段に重点をおいて指導しています。
しかし矯正治療中の患者様には、補助的な手段として、フッ素ジェルを使っていただくことによって、歯ブラシなどで取り除けなかった細菌を減らす努力をしてもらっています。
Q.矯正治療によって顔の輪郭や顔のゆがみも治りますか?
Ans.顔が左右非対称になったり、ゆがんだりする最大の原因は、噛み合わせが左右均等になっていないために、左右の筋肉の収縮率に差が出ることにあるのです。
顎が右に強く引っ張られる噛み合わせの人は顔が右にゆがみますし、左に引っ張られる人はその逆になります。
出っ歯の人は、顎が小さく見え、二重顎のように見られやすいですし、受け口の人は顎がしゃくれた口元になってきます。
子供時代から成長期に悪い噛み合わせが続き、顎や頭蓋の骨の成長が間違った方向に促進されたり、抑制されたりしている場合には、大人になってから骨を削ったりする美容整形的な外科手術が必要になります。
しかし、正しい噛み合わせを作り、左右、前後の筋肉の収縮率を同じにすることと、ストレッチのような顎の運動を併用することによって、ほぼ対称的な顔に戻るのです。
口のまわり、顎のまわりの筋肉の運動を正しくすることによって、口元のみならず、顔のゆがみや輪郭もまっすぐに戻ってくるのです。
Q.歯並びを悪くする悪習慣
Ans.歯並びが悪くなるのは、全て遺伝が原因だと思っている人が多いですが、実際には遺伝的要因以上に、悪い生活習慣によって生じている場合が多いのです。
1.口呼吸をする
酸素を吸うということに関しては、鼻でも口でも同じことのように感じますが、実際には口で呼吸をすることは、細菌を多く体内に入れてしまい、体の免疫力が弱くなってきます。
そして歯並びにも多大な悪影響を及ぼします。
歯は口元の筋肉が内側に押し、舌が外側に歯を押して、バランスのとれた位置に歯を並べようとします。
それが口で呼吸していますと、口を閉じる筋肉の成長が十分に発達せず、俗に言う「しまりのない口元」になり、歯も前方へ出気味になります。
2.指をしゃぶる
幼児には赤ちゃんの時のなごりとして、指をしゃぶる癖があります。
ある時期は、この習慣は仕方のないことなのですが、この指をしゃぶる癖が長く続きますと、前歯が出っ歯になってしまいます。
3.舌を前歯でかむ(舌を押し出す)
舌を前方に押し出したり、前歯で噛む悪い習慣がつくと、奥歯で噛み合わせても前歯でかみ合わない開口という噛み合わせになってしまいます。
4.頬杖をついてテレビを見る(勉強する)/片方ばかり向いて寝る
左右どちらかの顎にだけに力がかかるような生活習慣をしていますと、歯や顎の成長に左右差が出てきて当然歯並びにも問題が生じてきます。
Q.歯列矯正治療に関して悪い噂を耳にしますが、本当ですか?
Ans.最近は、患者様の方から「歯列矯正はしない方がいいと聞きましたが、どうなんでしょうか?」とか「私の友達で、矯正治療後に体調が悪くなった人がいるのですが、矯正治療の影響なのですか?」と質問してくることがあり、一部の人の間で歯列矯正治療に関する好ましくない噂が広まっていることは間違いのないことのようです。
以前に大手の新聞が社会面で矯正治療のことを悪く書いていたことには驚きました。
最近でも、TVや本で矯正治療や審美治療後に体調を壊した患者様の特集を組んだりするのを目にすることが多くなってきました。
歯科医師の中にも、噛み合わせに重点をおいて治療をしている先生の中に、矯正治療を否定的に考えている人もいます。
しかし、安易に矯正治療を行なったり、噛み合わせの考え方に間違いがある歯科医が矯正治療を行なう場合に問題が生じるのであって、本来は、正しい矯正治療を行なうことによって、外見だけでなく体調も改善されて機能的にも良くなるのです。
これ以上矯正治療が誤解されないように、歯止めをかけるためにも、一人一人の歯科医師は、慎重に矯正治療や噛み合わせ治療を行なっていかなければならない時がきていると思います。
Q.なぜ矯正治療後に歯が動いて戻ることがあるのですか?
Ans.ワイヤーで歯を動かして矯正治療をした後、歯の裏側に針金のような物を固定して、歯を動かないようにしたり、入れ歯のような取り外せる物を口の中に装着して、歯をその位置に固定する時期を、保定期間といいます。
裏側で固定していた針金が外れたり、保定装置を指示通りに装着しなかったりすると、歯は動いて戻ろうとします。
しかし、何年間も保定をしていたのに歯が動いて戻ってしまう最大の原因は、噛み合わせが安定しないで、顎のまわりの筋肉の動きと歯の並んでいる位置が一致していないということなのです。
見た目の歯並びをきれいにすることは、そんなに難しくありませんが、顎の運動に合わせた位置に噛み合わせを作っていくことはとても難しく、それができれば歯の後戻りも生じなくなります。
Q.保定について
Ans.矯正治療では歯を動かすことが終わっても、そこで安心することができないのが歯医者泣かせのことなのです。
やっとの思いできれいな歯並びを作っても、そのまま放っておくとあっという間に歯は元のように動いてしまうのです。
そのために歯を元に戻さないようにするために保定していかないといけません。
保定の方法としてはいくつか方法があります。
1.歯の裏側から見えないようにワイヤーと歯科用の接着剤で固定する方法
この方法は患者さんにとってはつけっ放しでよく一番楽な方法ですが、デンタルフロスをできないため、お手入れ的に不十分になったり、いつの間にかとれている部分があっても気付かずに少し動いてしまう可能性があります。
この方法は前歯には有効ですが、奥歯には使用できません。
2.薄いマウスピースを装着する
歯を動かす為の物ではなく、その位置で歯を止めておくマウスピースを使ってもらいます。
このマウスピースは全ての歯を動かさないようにできていますが、長い時間装着しないと歯は動いてしまうため、患者さんの使用時間によって保定効果は全然違ってきます。
3.入れ歯のような装置
これはホーレーのリテーナーと言って一般的な保定装置です。
マウスピースと同様に長い時間装着しないと効果はないので、患者さんの協力によって保定の効果も違ってきます。
どの保定装置にも長所と短所もありますので、初めの歯並びの状態や患者さんの性格などによって使い分けることが大切になってきます。