目 次
噛み合わせのズレの程度と体調不良のひどさの相関関係
当クリニックを訪れる噛み合わせに問題のある患者様の多くが、「私の噛み合わせのズレはひどい方ですか?」という質問をしてくる。
噛み合わせがズレているかどうかは、私の経験では、殆どのケースがパッと見て判断できる。
噛み合わせのズレの程度も10段階で示せば何点ぐらいだということは可能である。
しかしそのズレの程度と体調不良のひどさが必ずしも一致しない場合も多いのです。
10点満点で3点ぐらいなのに、たいした体調の不良を訴えない人もいれば、10点中7点ぐらいに思えるのに、ひどい体調の不良を訴える人もいるのです。
もちろん統計的に言えばやはり、噛み合わせのズレがひどい人程、体調不良のひどい人も多いのですが、ムシ歯のように、ムシ歯の大きさに比例して痛みもひどくなるという1:1の相関関係は、噛み合わせのズレと体調不良にはみられないのです。
従って噛み合わせを直しても100%体調不良がとれるということを治療前に約束することは無理なのです。
噛み合わせ異常と身体の関係
噛み合わせ不良が身体に与える影響について、TVや雑誌などのマスコミで取り上げられる機会も多くなり、患者様の方から、頭痛、肩こり、首の痛みなどのひどい場合に、歯科医院で治療を受けようと希望される人も増えてきました。
頭痛、肩こり、腰痛などの筋肉系の問題と手足のしびれ、イライラ、生理痛などの頚椎のねじれに由来する血管神経への圧迫の問題と大きく分けて2つに大別できます。
噛み合わせ治療と不定愁訴(頭痛、肩こり、めまい、耳鳴りなど)の関係には、不明な点も多く、同じような噛み合わせの人を治療しているのに、両者の治療結果に大きな差が出ることもあり、「治療前に100%治りますよ」と断言できない歯がゆさがありますが、噛み合わせのズレが健康に多大な悪影響を与えていることは間違いのないことであり、今後とも、年々噛み合わせの大切さがクローズアップされてくることでしょう。
噛み合わせ不良と関係していると思われる症状には、頭痛、肩こり、耳鳴り、整理痛、生理不順、冷え性、手のしびれ、腰痛、めまい、不眠症、鼻づまり、高血圧、イライラなどが考えられます。
噛み合わせ治療での患者の精神面
人は弱いもので、何かに依存して生きていきたがる。
子供は親に頼ったり、学校の先生に頼ったり、大人でも宗教に頼ったり占いに頼ったり、何かに頼って生きたいのだ。何か失敗したり、うまくいかないことがあれば人のせいにしたくなります。
噛み合わせの治療も、本当に噛み合わせのズレが原因で七転八倒している人や日常生活まで支障のある人もいらっしゃいますし、がまんしてがんばって生きている人もいます。
私は噛み合わせを治すことはできますが、神様ではないので、すべての患者様の症状を100%治すことは出来ません。
人間ならば誰でも日によって疲れる日もあれば、快調の日もあります。
快調の日が普通で、疲れる日が異常だと思い込んでいる人は、その原因を噛み合わせに結びつけようとします。
噛み合わせ治療前には、毎日頭痛が合ったのが治療後に数月に一度頭痛があったとしても、また噛み合わせが悪くなったと考える人は、常にベストでないと噛み合わせを原因にして逃げ込もうと考えます。
これでは治るものまで治らなくなります。
人間はもっともっとと欲求があるので、10の痛みが5や3に減っても減った痛みに感謝せずに、残った痛みに頭はいきます。
噛み合わせ治療の説明は歯科医院で異なる
明らかに見当はずれの説明をしている歯医者の話を聞くと
私の医院では、初診時や治療後には、患者様の言葉には極力耳を傾けるようにしています。
患者様の言葉によって、歯医者にとって当たり前の事が患者様の視点からは、違う見方をしていたりすると、ハッとするようなこともたまにあります。
それほど、噛み合わせに関しては、知らないのなら、知らないと言ってあげればいいものを、ウソの説明をされると、その説明の間違いを正していかないといけないですし、患者様はなぜ、歯医者によって、言うことが違うのか不信に感じ始められます。
噛み合わせ治療に関しては、10人の先生がいたら10通りの説明があるぐらい考え方に違いがあることは仕方のないことなのですが、明らかに見当はずれの説明をしている歯医者の話を聞くと、その説明を信じている患者様が可哀相になってきます。
噛み合わせ治療、矯正治療においては、歯科医院による治療レベルの違いが大きい
特に「噛み合わせ治療」「矯正治療」においては、歯科医院によっては、治療レベルの違いがありすぎるので、複数の医院で相談を受ける事が大切である、といわざるをえないのが今の現状です。
ナイトガードやスプリントなどの、歯に危害が加わらない治療なら、治療法に間違いがあっても問題はないですが、歯を削ったり、歯を抜いたりする場合は、取り返しのつかないことになってしますので、何件かのクリニックで説明を受けて、納得してから治療を受ける必要があると思います。
噛み合わせ治療の難しさ
同じような治療をしても、治療結果に差が出るのは?
長年噛み合わせ治療をしてきて、噛み合わせ治療において、技術的には絶対的な自信を持てるようになってきた。
私が考える正しい噛み合わせは、ほぼ間違いないのではないかと自負している。
しかし治療に来られる人の改善率は100%ではない。
同じような噛み合わせのズレの人なのに、同じような治療をしても、治療結果に差が出ることがあるのだ。
これは医学という科学的な目で考えるとどうしても納得がいかなかった。
長い間この答えを捜し求めていたが、解決の糸口に精神面、メンタル面の要因が関係しているのではないかと思うようになってきた。
治らないという人達はいくつかのタイプに分けられる
治らないという人達をいくつかのタイプに分けられることに気付いた。
まず来院した時からこちらに敵対心、不信感など攻撃的な態度で接してくるタイプの人が一番多い。
「私は病気なのだ、医者なら治せ」と言わんばかりの態度を取ってくるのだ。
このタイプの人は、長年噛み合わせ治療で歯科医院を転々としていて、時間も、費用も無駄に使ってきており、歯医者に対して多くの不信感を持っており、自分でもいろんな本を読んで、多くの知識を得ている為に、人の話にも素直に耳を傾けないで、自分に都合のいい話の部分だけを勝手に解釈しようとします。
話をしているだけで、こちらもとても疲れてしまい、とても信頼関係などは作れません。
自分に都合のいい話でないとまた次の歯科医院を捜し続け、結局、間違った知識だけが増え続け、一生歯医者を捜し続けるのではないかとさえ思えます。
依存心のとても強い人はなかなか治りません
次に依存心のとても強い人はなかなか治りません。
人間の体調というのは自分の経験でしか比較できないですから、他人はみんな毎日快調に生活していると思えば、自分のちょっとした疲れとかもこれは噛み合わせの異常からくるものだと思い込んでしまうと、正常なものまで異常になってしまいます。
歯医者は病気を治す補助をするだけで、最後は自分の中で絶対治すぞ、負けないゾという気持ちが必要なのは、どの病気にもあてはまることのように思います。
最後に治療期間が長い患者様でノイローゼ気味の人の治療はとても難しいです。
長年、毎日毎日噛み合わせのズレばかり考えている人は、その期間が長い人ほど、精神的なケアも必要になってきます。
これは全ての原因を噛み合わせのズレと結びつけ、風邪をひいたり、少しの疲れまで噛み合わせを原因と考え、正しい噛み合わせの人は毎日毎日が完璧なのだと信じている人は、正しい噛み合わせを作っても、精神的に強くなって、噛み合わせのことを忘れる努力をしないといけません。
治療して治らなかったらどうしてくれるの?
顎関節症の治療にはトラブルは付きもの?
噛み合わせが全身の健康と密接な関係があるのは間違いのないことですが、100%全ての人の症状が治るのでないのなら、自分がその治療をして治らなかったら患者様は時間もお金も返して欲しいと思われる人もいると思います。
私は慎重なタイプなので、患者様と十分話し合って患者様が納得されてからでないと、不可逆的な、削ったり後戻りのできない治療には手をつけないようにしていますので、患者様との間でトラブルは生じませんが、顎関節症の治療にはトラブルは付きもので、ドクターも患者様も十分な注意が必要になってくるのです。
「絶対この人治るのにな~」と思っていても医療行為に絶対はない
ドクターの方は、その患者様は治せるものなのかを慎重に診断してから判断するべきですし、患者様もその先生の説明が納得いくものかどうかを判断してから治療にとりかかるべきです。
ガンや内臓系の手術で「成功率は50%ですけれどどうしますか」と聞かれて殆どの人は「それでもお願いします」といいますが、噛み合わせの大掛かりな治療で「よくなる確率は80%です」といわれても思いとどまる人も多くいるのは、患者様の意識の中に、「噛み合わせのズレと体の不調が関係していないかもしれない」という疑問や不安も大きいからだとおもいます。
100%の成功率でない以上、絶対治りますから治療すべきですと言えないので、信じてくれる人のみ治療をしていくしかありません。
心の中では、「絶対この人治るのにな~」と思っていても医療行為に絶対はないので、一歩一歩慎重に説明も治療も段階を追って行っています。
そういう意味でも長年、医療不信、歯医者不振になっている人は、心のとびらを聞くのが一番の大仕事になってしまいます。
年々顎は小さくなっているが歯の大きさは変わらない
人間の顎は時代とともに小さくなってきています。
食べ物がかたくて十分に顎を使わないと咀嚼できなかった時代には、顎が発達してがっちりしていました。
しかし近年とみに、グルメブームになり食べ物の欧米化にもともない柔らかい物ほどおいしいという傾向になってきました。
十分に噛まなければ顎に血液も行き届かなくなり、顎が発達しません。
それに対して歯自体のサイズは全然変化が無いのです。
よく噛もうが、噛むまいが、歯の大きさは昔と一緒なのです。
その結果親知らずなどは、生えてくるスペースが無くなり横になって生えてきたりするのです。
昔は親知らずもきちんと生えているのが当たり前だったのに今では親知らずがきちんと生えている人は殆どいないのが現状です。
そのうちにもっと顎が小さくなり、その手前の歯でさえきちんとはえなくなってくるでしょう。