監修:青山健一
はじめに
「出っ歯には二種類ある」と言われると「???」となる方が少なくないのではないでしょうか?
「出っ歯」と聞くと芸能人では誰をイメージされますか??
明石家さんまさんや久本雅美さんなどは出っ歯の代名詞のように言われますが、出っ歯にも大きく分けて2種類の出っ歯があることをご存知ですか?
出っ歯の中にも歯だけが出ている歯性の出っ歯と、鼻の下の骨から出ている骨格性の出っ歯の二つのタイプがあるのです。
そして、日本人の多くは後者タイプで、前歯が出ているのではなく骨格が出ている場合が多いです。
一般的にゴリラ顔と呼ばれているタイプの人は骨格性の出っ歯なのです。
歯性の出っ歯か骨格性の出っ歯かで、適した矯正方法も違ってくるのです。
1、出っ歯治療の特徴と治療法
歯並びは第一印象を大きく左右する一因ですよね。
特に出っ歯は日本人に多く、矯正相談にいらっしゃる方のお悩み第一位だと言っても過言ではありません。
出っ歯を治す矯正治療で最も多い矯正方法は、小臼歯を2~4本抜歯して行う抜歯矯正です。
抜歯矯正は歯並びだけではなく横顔(Eライン)もあわせて改善する事が出来ます。
骨格的に大きな問題がある場合は顎の骨を削る外科手術を併用する治療法もあります。
ですが、そもそも骨格や顔貌の変化を望んでいない方や健康な歯を抜歯する事に抵抗がある方は親知らず以外の歯は抜かない非抜歯矯正という方法もあります。
Eライン
Eラインとは、アメリカの矯正歯科医師が横顔の美しさの基準として発表したもの。
人の横顔を見たときに鼻の先端と顎の先端を結んだラインを、“エステティック”の頭文字から“Eライン”と呼び、Eライン上にある唇の位置によって、横顔がきれいかどうか判断するというものです。
2、抜歯矯正と非抜歯矯正(歯を抜かない矯正)の比較
通常、抜歯矯正の場合は小臼歯を上下左右1本づつ(計4本)を抜いて矯正治療を行いますが、単に歯並びを良くするという美容的目的のために健全な歯を抜くことに対して疑問を持ったり、納得できないという患者さんは少なくありません。
矯正治療を含む歯科治療の本来の目的は正しい噛み合わせを作り、健康的な生活を送っていただくことであって、その正しい噛み合わせを作るために小臼歯は無くてはならない歯であると考えられています。
以下の比較表を参考にしていただき、歯を抜かない矯正治療のメリットについて考えてみましょう。
抜歯 | 非抜歯 | |
---|---|---|
期間 | ワイヤー2~3年 | ワイヤー6ヶ月 マウスピース6ヶ月(トータル1年) |
噛み合わせ | 隙間が残り歯が傾斜するため、咬合が低くなる(低い人がほとんど) …低いとなぜダメ?⇒下顎が後ろに下がるから下顎の可動域が少なく、筋肉が過緊張しやすくなるため。 |
咬合が高くなり、筋肉の過緊張が改善され、負担がかかりにくくなるため体調改善する可能性あり |
口元の引っ込む量 | E-lineがきれいに整い、口元が大きく引っ込む。抜歯する分歯列が小さくなるので、豊麗線が目立つ可能性あり。(脂肪吸引と同じ原理) | E-lineは今と変わらない(骨格的に出っ歯ぎみな方、受け口の方には不向き) |
体調改善 | 美容目的が優先なので、改善しない場合が多い | 体調不良の改善と、歯並びの改善が両方できる。また、スプリント(保険)で試すことができる |
削るかどうか | 削らない | 最終仕上げで削る可能性あり |
金額 | 100万円前後 | 100万円前後 |
扱う医院の数 | 多くの医院がこちら | やっている医院が少ない |
後戻り | 奥歯が傾いていて咬み合わせが安定していない場合は、臼歯がさらに倒れて戻りやすい | 奥歯が直立すると咬み合わせが安定し、臼歯が倒れないため、戻りにくい |
3、非抜歯による矯正治療が選ばれている理由
- 体調の不調が改善される
- 健康な歯を抜かずに矯正治療ができる
- 治療期間が短い(平均約1~2年)(抜歯矯正の約半分の期間)
- マウスピースだけで行う矯正(インビザライン)にも適している
- 後戻りがしにくい
歯の矯正はなぜ必要でしょうか?
見た目を綺麗にしたいということが、歯列矯正を希望される患者様の中で一番多い理由ですが、歯並びが悪いことは、それだけの問題ではありません。体全体の健康にも、大きく影響します。
歯並びが悪いまま放置していると、下記のような症状が出る可能性があります。
- 噛んだ時に筋肉に負担がかかるため、肩こり、耳鳴り、生理痛、偏頭痛、不眠症、腰痛など全身への悪影響が起こる可能性がある
- 顎の成長に異状をおこし顔が非対称になってしまうことがある
- 噛み合わせが悪いために口が開けにくく、顎関節症になる可能性がある
- 食べ物を十分に噛み砕くことができないため、咀嚼障害がおこる可能性がある
- 歯の周りに汚れがたまり、虫歯や歯周病になりやすくなる
- 人からの見た目が気になり、喋ったり笑ったりすることに劣等感を抱きやすくなる
- 奥歯を噛んだ時に前歯が開いてしまう場合は、発音が正しくできない
こういった問題点を改善していく際に、歯を抜かないで矯正する方が体にとってはいいことが多いのです。
4、非抜歯による矯正治療の流れ
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非抜歯による矯正治療の流れ
非抜歯矯正の治療の流れ。MEAW矯正やインビザラインについて
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☆まとめ
一口に「出っ歯」と言っても、横顔(Eライン)を治したいのか、歯の角度が治れば良いのか人それぞれです。
自分が気にしていることが何なのかを把握されたうえで、「抜歯矯正」「抜歯+外科手術」「非抜歯矯正」のメリットとデメリットをよく比較し矯正方法を選ぶ事が重要になります。