私が「歯を抜かない矯正」にたどり着くまでの道のり

監修:青山健一

はじめに

私の行っている矯正治療では、親知らず以外の歯を抜くことはありません。治療期間も、ほとんどの人の治療が一年ぐらいで終了し、部分矯正では約半年で終了します。80%以上の方は、治療後に体調の改善を実感されています。

今回、他の一般的な矯正方法との違いを公開します。多少なりとも矯正治療の知識のある方なら、今回ご紹介する内容は、従来の矯正治療と比べて大きな違いが感じられるのではないでしょうか。

現在、すでに歯を抜いて矯正治療を進めている人や、歯を抜いた矯正治療を完了されて何かしっくりこない人にとっては、従来の矯正とは大きく違うので、読み終わってからショックを受けてしまう方もおられるでしょうから、これ以上は読まないほうがいいかもしれません(笑)。
このページの内容を読むということは、両刃の剣のようなものだと覚悟して読んでください。

そして、今から矯正治療を始めようと思っているが、矯正治療に対しての正しい情報が欲しい人や、矯正治療はしたいのだが、歯を抜いてまでは矯正治療に踏み込めない人、矯正治療に対する悪いうわさを耳にして治療に不安があり、決心するのが臆病になっている人、これらの方々には、抜かない矯正との出会いがあなたの人生を大きくよい方向に変えていくことと思います。

私が「歯を抜かない矯正」にたどり着くまでの道のり

1、歯を抜くか抜かないか

歯を抜いて治療する矯正方法がいまだに多いのはなぜか?

矯正治療において、歯を抜くことと歯を抜かないことはいったい何が違うのでしょうか?
患者さんも歯科医も、歯を抜きたくて抜く人は一人もいないでしょう。
にもかかわらず、歯を抜いて治療する矯正方法がいまだに多いのはなぜでしょうか?

歯を抜いて矯正するべきか、歯を抜かずに矯正するべきかは、長い間討論されてきて、少し前までは、やはり歯を抜いて治療するしかないという結論に落ち着いているように思いました。

それが、成人の矯正治療が多くなった昨今では、歯を抜いて矯正治療した後に、体調不良が出たり、後戻りが多く出てきたりして、一部の歯科医の中で、歯を抜く矯正治療に対して、何らかの問題点があるのではないかという疑問がわいてきています。

当クリニックでは歯を抜かない矯正治療で好結果が出ています

そんな中で、当クリニックにおいては30年近い臨床経験から、歯を抜かない矯正治療で好結果が出ているのです

歯を抜いて治療する歯科医は、「歯を抜かずに矯正治療をすると、前歯が出っ歯気味になりますよ」と、必ず言われます。

しかし、私はこれまで5000人以上の矯正治療を行ってきていますが、治療結果で問題になるような出っ歯になったことはありません

このような治療説明の違いはなぜ起こるのでしょうか?

歯を抜いて治療する歯科医は、Eラインといって、横顔の改善を最優先に考えており、奥歯よりも前歯を動かすことに重点を置いているので、中間の位置の歯を抜いて、そのスペースに歯を動かすように治療を進めていきます。

それに対して、私が行っている治療方法では、奥歯を後方へ動かすことに重点をおきます。その結果として前歯が中側に引っ込んで並んで、外見上もきれいな歯並びになるのです。

歯を抜くか抜かないか

2、矯正治療に臆病になっていた時期

私が歯を抜かない矯正をするようになったいきさつ

私が歯を抜かない矯正をするようになったいきさつをお話しします。

私も学生時代には顎の長さと、歯の大きさを測って小臼歯を抜くという治療を学びました。専門的知識があるといっても、歯学生でまだ実際の臨床経験はないので、普通の患者さんと同様に何でもない歯を抜くことに大きな抵抗感がありました。

矯正治療は診断も治療も大変で、何でもない歯を抜いて治療後に何かあったら自分では責任も取れないし、荷も重すぎると感じ、卒業してからは一般的な治療をする医院に勤め、勉強と診療に専念しました。

虫歯の治療をするときに小臼歯のない患者さんに出会うことも増え、歯の数が足りず歯並びが悪いので、「もしかして、以前に矯正治療をされていましたか?」と聞くと、「子どものときに矯正治療をしたのですが、大人になったら元のように戻ってしまいました」「私には矯正治療は合わなかったみたいです」「以前に一度やったので、もう矯正装置はつけたくないんです」と言われる人とたくさん出会いました。

「顎関節症」という言葉をよく耳にするように

そんな折、歯科医の間で「顎関節症」という言葉をよく耳にするようになってきました。
歯の噛み合わせが悪いと、頭痛、肩こり、耳鳴りなどだけでなく、めまい、吐き気など重度な症状を引き起こすこともあるのだというのです。

当時、この「顎関節症」の治療はとても難しく、日本でも完全に治療できる人はほとんどいないという噂も耳にしました。
そして、矯正治療後に、この「顎関節症」を引き起こすことも多いという話を聞くようになり、矯正治療に対してますます臆病になっていた時期でした。

実際に、外見的には矯正治療はうまくいってきれいな歯並びなのに、頭痛や肩こりなどの症状の有無を聞くと、多くの方がそういう不定愁訴があり、外見的にきれいになっても、噛み合わせが本当に合っているのか疑問に感じていました

顎関節症と矯正治療の関連性は?

そんなとき、勉強会でたまたま隣に居合わせた先輩歯科医師が、矯正治療のことを、「あんなものは美容整形と同じで、医療じゃないんだよ」と、強い語調で私に言われたのです。

私もこの先輩歯科医師のように技術のある歯科医師になりたいと向上心に燃えていただけに、このよく勉強されている先輩歯科医師はなぜ矯正治療に対してこれほどまでに否定的なことを言うのか、診療経験が浅かった当時の私には全然理解できませんでした。

それがトラウマのようになり、その後、矯正治療を専門にされている歯科医師とお話しする機会があるたびに、「矯正治療後に、顎関節症になったりすることはないですか?」と同じ質問をして、顎関節症と矯正治療の関連性について尋ねましたが、当時どの歯科医師も「2つの間に相関関係はない」ということを言われました。

それでは、なぜ私の出会う患者さんたちは矯正治療後に不定愁訴が出たり、後戻りをしている人がいるのだろうと大変不思議でした。
その疑問は、今の矯正治療法に出会うまではなかなかすっきりと解決されることはありませんでした。

矯正治療に臆病になっていた時期

3、多くの歯科医が抱く小臼歯を抜く矯正への疑問

「顎関節症」の患者さんが来院されるのが恐怖でした

大学卒業当初、私は日々診療していて、「顎関節症」の患者さんが来院されるのが恐怖でした。といいますのも、当時、顎関節症の治療方法は確立されておらず、一般の開業医では確実に治療できる歯科医師がほとんどいないといった状況でした。

そうは言っても、困っている患者さんはどうにか治してほしいので、わらをもすがる思いで来院されます。私自身も、日々、本を読んだり、勉強会に行っているうちに、「顎関節症」の治療に対して少しずつ自信もついてきました。

当時、私が行っていた「顎関節症」の治療は、スプリントといって、マウスピースのようなもので顎を安定させたり、歯を削って被せて噛み合わせを改善する方法でした。

これらの方法でも患者さんは満足されていたのですが、スプリント治療や歯を削って被せる治療方法の欠点も十分わかっていたので、矯正治療によって顎関節症が治ればそれらの欠点も解消できるのに……ということは、常に頭にありました。

矯正治療と噛み合わせ治療を関連づけて勉強していくと・・・

当時の考えでは、矯正治療は見た目をきれいにするためのものであり、顎関節症の治療手段として使える類いのものではなかったのです。

普通、矯正治療を専門に行う歯科医師は、初めに外見上の歯並びをきれいにすることが前提で、その後噛み合わせや「咬合」を考えて、改めて勉強していくという人が一般的です。

私の場合は、幸か不幸か、正しい噛み合わせの勉強からスタートして、歯を削ったりしないで噛み合わせ治療をしたいという必要に迫られてから、矯正治療を勉強するようになりました。

矯正治療と噛み合わせ治療を関連づけて勉強していくほど、従来の小臼歯を抜く矯正に対して疑問や不安感が、どんどん膨らんでいきました。

絶対に小臼歯を抜く矯正は良くない

臨床経験も長くなり、噛み合わせ治療を専門にやっていると、以前は気づかなかったことが見えてきて、あることが自分の信念になってきたのです。

それは、従来の治療法では不必要として抜いて治療される小臼歯(前から四番目の歯)が、他のどの歯よりも大切で、一番かなめの歯であるということです。

私は、診療経験を積めば積むほど、この小臼歯を抜くことに対して抵抗が大きくなっていきました。そして歯科医師になってもうすぐ30年になりますが、今では絶対に小臼歯を抜く矯正は良くないと思っています。

多くの歯科医が抱く小臼歯を抜く矯正への疑問

☆まとめ

いかがでしたでしょうか?
1人の歯科医師が抜かない矯正治療の良さを確信するまでのストーリーをお書きしましたが、診療は日々戦いです。

歯科医師は患者様の悩みを解決できるように、日々研鑽しています
一生懸命治療しても、患者様の悩みが解決したり、患者様に満足してもらえなければ、その治療は成功とは言えないと思います。

歯医者も自分がいいと思う治療を提供して、患者様に満足してもらおうと頑張っています。
歯を抜かない矯正にご興味を持たれた方は、一度、歯を抜かない矯正に力を入れているクリニックでのご相談をして見てはいかがですか?

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