1)歯槽骨(あごの骨)が減少する
歯を動かすことにより、土台であるアゴの骨にも負担はかかりますので、歯槽骨が少しは減ってきます。
多くの場合、それが歯の寿命を短くしたり、問題が生じたりする類いのものではありません。歯の部分によっては、少しは食べ物が詰まりやすくなることも希にありますが、大抵の場合は気になる程のことではありません。
2)歯茎の退縮
1)とも関係しますが、歯槽骨が減少すれば、それに伴い歯茎も痩せてくることもありますが、歯槽骨の厚みには個人差があり、殆どの場合には目に見えるような歯茎の退縮はないものですが、特に前歯の歯槽骨が薄い場合には前歯の歯茎が退縮することがあります。
3)歯根の吸収
硬い骨の中で硬い歯を動かしていきますので、1)の歯槽骨が吸収していくのと同じように、歯根にも僅かな吸収が生じる可能性があります。
しかし1)と同様に、それが歯の寿命を短くしたり、将来的に大きな問題が生じるレベルになる場合は、殆どありません。抜歯矯正は歯体移動で2~3年動かすため、抜かない矯正(非抜歯)よりも歯根吸収の確率は高くなります。
4)歯髄の切断
歯を動かしていく際に、歯の中の神経が歯の動きについていけない場合に、その歯の神経が死んでしまう場合があります。
奥歯は大きく動かすことは難しいので、歯髄が切断されることは少ないですが、前歯で移動量が大きな場合や、成人で加齢とともに歯髄が細い場合などには、歯髄切断がまれに生じることがあります。
確率としては1%弱の確率と言われています。
歯髄の切断が生じますと、歯の神経の治療をしていかないといけなくなりますが、抜歯することはありません。
5)骨性癒着(歯根癒着)
転倒、事故など何らかの外傷で脱離したり、脱臼した後に歯を戻したりした場合に起きやすく、歯根膜の損傷が主な原因と考えられています。その他、感染根管による長期的炎症にさらされた時にも起きます。
歯根と歯槽骨が骨癒着している場合、矯正でその歯を動かすことが出来ません。部分的な骨性癒着は、事前にレントゲン等で判別することは不可能であり、矯正中に気付く場合がほとんどです。その場合は、抜歯をして補綴治療やインプラントが必要となります。
矯正治療には、上記のようなデメリットの可能性もあり、メリットばかりではないことを十分考えられた上で、矯正治療をされるかどうかをご判断ください。
一般的に言いまして、上記のデメリットは起こり得る可能性が低い事を考えると、矯正治療後のメリットの方が断然多い場合が大半ですので、治療後には多くの患者さんが喜ばれ、矯正して良かったと感じられることとは思います。
しかし、あまりにも過度な期待をされていたり、一切のデメリットを受け入れられない患者さんには、矯正治療に対して、再度考え直されることをお勧めいたします。
矯正治療は途中で治療を中止したり、転院することが難しいので、治療を決断される前に十分ご注意ください。