監修:青山健一
はじめに
歯の矯正はなぜ必要でしょうか?歯列矯正を希望される方の中で、一番多い理由は「見た目を綺麗にしたい」というものです。
しかし、歯並びが悪いことは、それだけの問題ではありません。体全体の健康にも、大きく影響することなのです。
歯並びが悪いまま放置していると次のような症状が出る可能性があります。
- 噛み合わせが悪いために口が開けにくく、顎関節症を起こしやすい。
- 噛んだ時に筋肉に負担がかかり、肩こり、偏頭痛、耳鳴り、不眠症、生理痛、腰痛など全身への悪影響が起こりやすい。
- 食べ物を十分に噛み砕くことができないため、咀嚼(そしゃく)障害がおこりやすい。
- 人からの見た目が気になって、笑ったり喋ったりすることに劣等感を抱きやすい。
- 奥歯を噛んだ時に前歯が開いてしまう場合は、発音が正しくできない。
- 歯の周りに汚れがたまりやすく虫歯や歯周病になりやすい。
- 顎の成長に異状を起こし、顔が非対称になってしまう可能性があります。
目 次
1.矯正治療の種類と特徴
矯正治療には、症状や年齢、そして、患者さんの生活習慣や見た目の希望などによって治療法や使用する矯正装置などが大きく異なります。
- ワイヤー矯正(抜歯矯正)
- ワイヤー矯正+マウスピース矯正(非抜歯矯正)
- マウスピース矯正(前歯部の部分矯正)
一般的に矯正治療とは、重なった歯やねじれた歯を一度外側へ拡大して歯を動かすためのスペースを作り、時間をかけて内側に力を加えて歯を動かして歯列を整えていきます。
矯正専門医による矯正治療は、ほとんどの場合1.のワイヤー矯正による抜歯矯正です。歯を抜くことによってできたスペースを利用することで比較的短期間に歯を移動させることが可能になることから、この矯正治療が現在のスタンダードとなっているのです。
一方で2.のワイヤー矯正とマウスピース矯正を組み合わせた非抜歯矯正は、1.と同様にワイヤーを使って側方に拡大することと後方に動かすことで、デコボコの歯を動かすためのスペースを確保してからマウスピースタイプの矯正装置で歯列を整えていく矯正治療法です。
マウスピース矯正は、矯正治療中の痛みや違和感が少なく、いつでも自分で矯正装置を取り外すことができることから近年特に注目されている新しい矯正治療です。
2.抜歯矯正と非抜歯矯正(歯を抜かない矯正)の比較
通常、抜歯矯正の場合は小臼歯を左右1本づつ抜いて矯正治療を行いますが、単に歯並びを良くするという美容的目的のために健全な歯を抜くことに対して疑問を持ったり、納得できないという患者さんは少なくありません。
矯正治療を含む歯科治療の本来の目的は正しい噛み合わせを作り、健康的な生活を送っていただくことであって、その正しい噛み合わせを作るために小臼歯は無くてはならない歯であると考えています。
以下の比較表を参考にしていただき、歯を抜かない矯正治療のメリットについて考えてみましょう。
抜歯矯正 | 非抜歯矯正 | |
---|---|---|
治療期間 | ワイヤー(2~3年) | ワイヤー(6ヶ月)マウスピース(6ヶ月) |
適応症 | すべての矯正治療に適応 | すべての矯正治療に適応 |
治療費 | 100万円前後 | 100万円前後 |
見た目 | ホワイトワイヤーなどで目立たないようにできる | マウスピースの装置はほとんど目立たない |
歯の治療 | ワイヤーを外す必要があるため基本的には不可 | マウスピースであれば並行して治療可能 |
矯正装置の取り外し | 不可 | 可能 |
虫歯・歯周病のリスク | 高い | 低い |
3.非抜歯による矯正治療が選ばれている理由
(1)体調の不調が改善される
従来の歯列矯正治療は、単にEラインをきれいにするという美容的な意味の治療として行われてきました。
近年、噛み合わせのズレと体の不快症状の関係がわかってきて、正しい噛み合わせに基づいた歯列矯正治療をしていけば、見た目の美しさだけでなく、顎の筋肉の運動を正しく機能させることにつながり、偏頭痛、肩こり、首の痛み、浅い眠り、生理痛、生理不順、など多くの不快症状が改善されています。
(2)歯を抜かずに矯正治療ができる
矯正治療では、真ん中の歯を抜くのが当たり前とされてきましたが、患者さんの多くは、歯を抜くのが嫌で矯正治療を諦めていた人も多く、歯を抜かないことをとても喜ばれます。
噛む筋肉の軌道に合った位置に歯を並べ代えるという、立体的で3次元的な発想によって奥歯の噛み合わせを正しい位置に並べれば、歯を抜かずに治療が行えるのです。
(3)治療期間が短い
通常、矯正治療と言えば2,3年は治療期間がかかるのが普通でしたが、歯を抜かない最新の方法により治療期間を大幅に短縮でき、多くの治療が、一年前後で終わっています。
歯を抜いて治療する場合は、歯科医師の独断で、全く新しい噛み合わせを作っていくということになりますが、歯を抜かない矯正治療は、本来正しく歯が並ぶはずだった位置に歯を置き直しているだけなので、その違いがよけいな時間を省くことにつながるのです。
(4)マウスピース矯正を取り入れている
矯正治療で早くワイヤーを外したいという希望はどの患者さんもお持ちです。
歯を抜かない矯正治療では、マウスピースによる矯正を取り入れているので、ワイヤー器具をより早く取り外すことが出来ます。
そして、歯列矯正治療が終了するまでマウスピースのような取り外し可能な透明な物を使って、人に気付かれずに治療を終了することができるのです。
取り外し可能なので、お口が衛生的に保たれ、痛みや違和感がワイヤー矯正に比べて少なくてすみます。
また、ワイヤーを使った歯列矯正治療と併用することによって従来の歯列矯正治療では考えられないぐらい早くワイヤー装置を取り外せ、治療期間も驚く程早く終わることもできるのです。
4.非抜歯による矯正治療の流れ
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1クワドヘリックス(1)とニッケルチタンワイヤー(2)を併用し前歯のデコボコを改善
(1)クワドヘリックス
■拡大装置
裏側に装着し臼歯部(奥歯)を側方に拡大することで、狭窄歯列 を改善します。
固定式なので患者様が取り外すことはできません。
使用期間:3~4ヶ月程度
※歯並びによって個人差があります。
(2)ニッケルチタンワイヤー
■形状記憶ワイヤー。
歯の表面に接着したブラケット(土台)にワイヤーを装着します。最初は細いワイヤーから、徐々に太いワイヤーへ交換しながら叢生(そうせい、歯の捻じれや段差)を改善します。
使用期間:3~4ヶ月程度
※歯並びにより個人差があります。
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2MEAW ワイヤー(3)で臼歯部の傾斜の改善・咬み合わせの構築
(3)MEAWワイヤー
ストレートワイヤーよりも長いワイヤーを曲げこむことで、歯を三次元的に動かすことができます。
この MEAW ワイヤーでは全ての歯を同時に動かすことができるので、噛み合わせの調整を短期間で行う事ができます。
使用期間:3~4ヶ月程度
※歯並びにより個人差があります。
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3マウスピース矯正で歯並びの微調整
マウスピースを使用し、歯並びを保定に向けて最終調整します。マウスピースは 20 時間以上使用します。
使用期間:5~6ヶ月程度
※歯並びにより個人差があります。
上下にマウスピースを入れた状態です。マウスピースは無色透明なので、周りから気づかれることはありません。
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4保定
矯正後もマウスピースを日常的に使用し、後戻りをしないよう固定する必要があります。
マウスピースは無色透明なので、目立つことはありません。
保定期間:3 年程度
☆まとめ
歯の矯正治療は、約8~9割が抜歯による矯正治療で行われており、非抜歯による矯正治療を積極的に取り入れている歯科医院は全国的にも多くはありません。
しかしながら大切な歯を残して最終的な噛み合わせを考慮した「非抜歯矯正治療」は、患者さんにとってメリットの大きい治療法であると断言できます。
当クリニックでは、最新の矯正治療方法と従来の治療方法の違い、来院された患者様の矯正治療方法、治療期間、治療費などを写真や模型を使って詳しくご説明させていただく「無料相談」も実施していますので歯並びに悩みをお持ちの方はお気軽にご相談いただきたいと思います。